2014年長野県神城断層地震/写真リポート
文責・写真/ 山村武彦


北アルプスの麓に位置する長野県北安曇郡白馬村(三日市場地区附近)

長野県神城断層地震
2014年11月22日22時8分、長野県北部を震源(深さ5辧砲箸垢襭6.7の地震が発生
地震調査委員会は神城(かみしろ)断層(約26辧砲琉貮堯別10辧砲動いたと推定・発表
(長野県はこの地震を長野県神城断層地震と統一)
震度6弱:長野県小谷村、小川村、長野市 
震度5強:白馬村、信濃町

主な被害(2014年11月27日16時現在/総務省消防庁)
全壊建物:33棟 半壊建物:60棟 一部損壊建物:684棟
死者:ゼロ 重傷者:10名 軽傷者:36名 
白馬村全体が震度5強?
震度6弱の小谷村、小川村、長野市よりも、震度5強の白馬村の一部地区に被害が集中
多くの建物が倒壊し、重軽傷を出したのは白馬村でもごく一部地区に限られている
とくに被害が多かったのは白馬村役場から南へ約5厠イ譴診鯒和次神城地区堀之内と三日市場
堀之内地区は姫川水系・谷地川沿いで、周囲に田畑のある小高い丘陵地
緩い傾斜地や畑の間に住宅が点在する集落で、背後には100〜150mの山がある
堀之内地区から約5〜600m南に三日市場地区があり、水田と緩い傾斜地に住宅がある
JR大糸線の神城駅、飯森駅、白馬駅周辺は建物や墓石に被害はなく
そこだけ見ると「白馬村:震度5強」は充分納得できる
しかし、墓石が倒れ、道路にクラックが入り、建物倒壊が目立つ堀之内地区と三日市場地区の
現場を見て、この二つの地区が「震度5強」の揺れだったとは到底思えない
過去50年間地震現場を見てきたが、建物等の壊れ方や被害の集中度合から勘案し
堀之内地区と三日市場地区は局所的に「震度6強」に襲われたと見る方が自然ではないだろうか
白馬村の地震計
地震計(K-NET白馬)は、白馬村役場の敷地内に設置されている
その地震計で最大加速度589ガルを記録したが、白馬村役場周辺に顕著な被害は見られない
役場から南へ約5厠イ譴針拉憩眞篭茲任話羶瓦飽銘屬垢觚民館をはじめ、甚大な被害を出している
地震計の設置場所、設置状況によって観測結果は異なる
役場敷地内に設置されていた地震計のデータだけで地域全体の震度を断定することはできない
堀之内地区と三日市場地区の震度は、専門家の詳細な現地調査等によって精査・検証する必要がある

昔の湖の縁?
住民によると昔、地すべりで堰き止められてできた古神城湖がこの辺にあったと聞いたことがあるという
とくに被害が集中した堀之内地区と三日市場地区は、地すべりでできた斜面を階段状に整地し
崩れた土砂で平らになった低地は水田にしていたが、その後一部埋め立てて街が形成されたのだと
白馬盆地と古神城湖
白馬村という名前は富山県と接する白馬連峰の白馬岳(しろうまだけ)に由来する
西は標高2,900m前後の後立山連峰、東は1,500m前後の小谷山地・山塊に挟まれた
白馬村は白馬盆地にあるが、盆地とはいっても白馬村は標高700mの豪雪地帯
白馬盆地は、東縁を糸魚川静岡構造線活断層系・神城断層が通る構造盆地
白馬盆地の北半分は北城盆地、南半分が神城盆地と呼ばれる
被害が多かった神城盆地は東西1辧瀑酲3劼諒儼岨鯵儼舛鬚靴討い
盆地南端は親海湿原(およみしつげん)を水源とする姫川が盆地東縁に沿って北流していて
支流である犬川、平川、松川が白馬連峰から流下して河岸段丘と扇状地を形成
この扇状地・段丘面上に展開したまちが白馬村です
神城盆地にはかつて湖(古神城湖)が広がっていたと考えられている

姫川の谷沿いから白馬盆地を抜けるルートは古くから新潟県糸魚川市から
松本方面へ抜ける主要交通路で、塩の道・千国街道として利用されてきた
白馬盆地内は国道148号線とJR大糸線が縦断しているが
この地震によりJR大糸線の南小谷駅〜白馬駅間で土砂崩れが発生し
11月30日現在、この区間は運転を見合わせており、バス代行輸送が行われている

住宅間の斜面に地表断層跡とみられる亀裂(三日市場地区)

 



三日市場地区

 

 

壊れた民宿の乾燥部屋(建物は壊れても犠牲者が出なかったことで住民の表情は明るい)

白馬の奇跡
北アルプスの麓の静かな町、まだ雪のない土曜の夜
地震が発生したのは10時08分、食事が終わった就寝前のくつろぎの時間帯であった
白馬村の堀之内地区と三日市場地区は、突然、猛烈な揺れに襲われる
食事の支度の終わった時間帯であったので、火はあまり使用されていなかった
石油ストーブは、自動消火装置が働き、地震後の出火を防いだ
住民たちは基本通り、落ち着いて身の安全を確保(自助)
身の安全が確保できた人は、向こう三軒両隣へ声を掛け安否確認(近助)
家の下敷きになっていた人を、連係プレーで迅速救助(共助)
見事な自主防災が功を奏し、甚大な建物被害にもかかわらず犠牲者はゼロ
日頃の住民連帯と適切な自主防災活動が「白馬の奇跡」を生んだ 
白馬村の地域コミュニティ
 白馬村は29行政区に分かれている。行政区は区長を頂点としたピラミッド型の住民組織で構成され、被害が多かった堀之内行政区には86世帯、230人が住んでいる。「堀之内行政区長」の下に約10世帯を束ねる8人の「組長」、各組長の下には補佐役となる2人の「伍長」が配置されている。行政区独自の決め事は、区費、協働作業、ゴミだし、お祭りなど、下水清掃、高齢者・学童みまもりなど多岐にわたり密度の濃い地域の住民交流を支える。
 防災訓練は、白馬村総合防災訓練が年1回、行政区ごとの防災訓練が年に1回以上実施されている(地域によっては年3回実施)。災害(地震であれば震度5弱以上)が発生すると、伍長はただちに担当世帯を回り、住民の安否確認を行う。それを組長に伝え、組長が区長に伝える仕組みとなっている。区長は直ちに村役場や消防団に伝える。今回の地震直後、短時間に集まった安否情報で迅速な捜索活動・救助活動ができた。このことが犠牲者ゼロに結び付いたものと思う。
 行政区、組ごとに普段から向こう三軒両隣・隣保共助の濃密な絆が構築されていた。豪雪地帯でもあり、雪かき、雪下ろし(彼らは雪掘りと言っていた)は協力しなければ、厳しい環境下で生きていけないという切実な必要性からも「互近助」が醸成されてきた。今回は、広域消防組合からの支援がくる前に、組長や伍長から依頼された地元の建設会社社員たちが重機を動員し、消防団や住民と一緒に倒壊家屋を持ち上げ地域が結束協力して閉じ込められを救助したという。地域の連携が見事に功を奏した。全壊家屋33棟で犠牲者ゼロは「白馬の奇跡」と呼んでも過言ではない。
 濃密な住民の近所づきあいは選挙の投票率にも現れている。今年7月に実施された村長選挙の堀之内地区の投票率は83%、平成24年の衆院選の投票率は77%に達する。投票率の高さを「誰が投票に行ったか行かなかったが、すぐ分かってしまうから」という人や「みんな親戚みたいなものだから「投票行った?」と声掛け合うから、自然と投票率も上がる」という人もいた。「これほど濃密だと煩わしくないか」と尋ねると「みんな親戚や兄弟みたいだから、なんでも相談できる。煩わしいどころか隣人がいなければ困る」と笑った。
 数年前に白馬村・小谷村に招かれて防災隣組などの講演を行ったあと、懇親会で聞いた話。「この辺では昔から隣近所が助け合うのは当たり前、雨が降って洗濯物が干しっぱなしなら、隣家の人が取込んでおくから安心して外へ出られる」「この地域に泥棒は近寄らない、変な人が来ると周辺の人たちが警戒していることが分かるから」などなど。今回の地震後、マスコミで「白馬の奇跡」と報じられたことについて住民に感想を聞いてみると「ちょっと照れくさいけど、当たり前の事をやったまで。でも、今までやってきたことやっぱり間違ってなかったと自信を持っている」と答えてくれた。このあと、雪の季節を迎える。復興開始は年明けになる。それまで、住む場所を失った人たちは民宿やホテルで生活することになる。しかし、誰も村を離れる人はいないとのことだった。

 

堀之内地区

 

 

 
この地区は築100年を超える民家(古い萱葺きをトタンで覆った屋根)が多い
上の写真の家も110年以上風雪に耐えてきたが、基礎ごとずれ、傾いてしまっていて
応急危険度判定士による「危険」の赤紙が貼られていた
豪雪地帯の建物は、雪(上部からの)の耐荷重はあっても、横揺れに耐えられなかったようだ
 

 

 
高橋五子(いつこ)さん(63歳)は、家でテレビを見ていたとき地震に襲われた
あまりの大揺れで立つこともできず、コタツの下に潜り込もうとしたとき大きなタンスが倒れてきた
タンスはコタツ台にぶつかったが、コタツ台の高さ分の隙間で助かったという
ほとんどの家具が倒れ足の踏み場もなく、停電で真っ暗だった
壁にかけていたご主人の携帯電話の地震を知らせる赤い点滅に気づき
その携帯の明かりで外へ脱出したという
石油ストーブは感震器付きだったので自動で消火され、火事にならなかった
「皆が助け合って、早い安否確認・救助で犠牲者を出さなかったことが何より」と話す
下の写真は高橋さんの家、ブルーシートで覆われた部屋に高橋さんはいた 
 

 

 

 

 
折れたリンゴの樹

 
亀裂の入った地面に土砂災害防止ブルーシート

堀之内地区のグランド地表が少し盛り上がりいくつもの筋がある

 

 
地区の指定避難場所「堀之内公民館」(堀之内地区の中心部)
堀之内公民館の中
堀之内公民館の中
堀之内公民館の中・時計は地震発生時刻(午後10時8分過ぎ)で止まっている

 
小谷村(おたりむら)(小谷温泉)
小谷村では建物の半壊は多いが
白馬村・堀之内地区と比較すると被害は少ないように思われた

小谷村・奉納(ぶのう)温泉
小谷村と白馬村を結ぶ148号線で土砂災害があり一部通行止はあるものの
小谷村周辺の民宿やペンションは一部地区を除き大きな被害はない

 
上の写真は堀之内地区の倒れた墓石 
下の写真は白馬五竜交差点近くの墓石
被害は白馬村の中の堀之内付近だけに集中、スキー場、白馬駅、神城駅・モはほとんど無傷
(マスコミは被害の大きな建物だけを繰り返し報道するので、結果として白馬村全滅の誤った印象を与える)
(近くでも被災していない地域、町並み、観光資源など、無事情報もきちんと伝えることを強く望みたい)

 
神城駅も周辺も、地震による被害は全く見受けられない

白馬駅と神城駅近くの148号線沿いの蕎麦屋(山人(やまと))も被害なく、平常通り営業中
ここの蕎麦は素朴で美味いと思う(リンゴのてんぷらも一興)

白馬駅(駅も周辺も地震による被害はほとんどなし)
白馬駅前のみやげ店も平常通り営業中

震度6弱を記録した善光寺・いくつかの石灯篭が倒れた以外、とくに被害はない
善光寺本堂・参詣客は途絶えることがない

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