|東日本大震災阪神・淡路大震災防災システム研究所現地調査写真レポート

熊本地震2周年・被災地は今
現地調査写真レポート:文・写真/山村武彦

 平成28年熊本地震(2016年4月16日)から2年目の2018年4月・被災地は今、工事関係車両が土ぼこりを上げ、自宅再建の槌音も聞こえる。しかしその槌音はまだ高くはない。倒壊建物が解体・撤去されただけの雑草茂る空地が目立つ。地域によって異なるが応急仮設住宅に住む人の約6〜8割が高齢者。自宅が全壊しみなし仮設住宅(アパート)に住む70代の男性は「被災者再建支援金では家を建てることはできず、住宅ローンが残っていて金融機関からは年齢的にも融資はできないと言われた」「復興住宅の申し込みはしたが、この先ローンと家賃を払って生活していけるか不安」という。貧富の差が生活再建格差をさらに広げている。
 2018年3月末現在、益城町だけでも応急仮設住宅に3,197人(1,261戸)、みなし仮設住宅に3,142人(1,217戸)の6,339人、熊本県内全体で約4万人もが未だ厳しい避難生活を続けている。仮設住宅入居期限は原則2年だが、多くが住まい再建のめどが立たず、復興公営住宅建設も遅れているため入居延長を申請。地震による死者は258人(2月末現在)。そのうち直接死は50人だけで、その4倍の208人は震災関連死。震災関連死における死者の9割が65歳以上。避難生活のストレス、今後の生活不安、高齢者の話を聴くと胸が痛む。
益城町木山応急仮設住宅

★熊本地震による死者/258人(2018年2月14日現在)
内訳
・直接死/50人
(益城町20人、南阿蘇村16人、西原村5人、熊本市4人、嘉島町3人、御船町1人、八代市1人)
・関連死/208人
・負傷者/約2,796人
・避難者/最大183,882人
★主な損壊建物/205,770棟
内訳
・全壊建物/8,667棟
・半壊建物/34,643棟
・一部損壊/162,460棟
・床上浸水/114棟
・床下浸水/156棟

★公営復興住宅の半数が入札不調
自力での住宅再建が困難な人のための災害公営住宅(復興住宅)について、熊本県内で建設予定の計1735戸のうち、着工が当初予定から遅れているのが5割弱の827戸に上っている。今年1月から宇城市と宇土市で初めて復興住宅の建設が始まったが、建設業界の人手不足で入札が不調に終わるケースが相次いでいる。 国土交通省によると、東日本大震災(2011年)の復興需要のピーク時より緩和しつつも全国的に建設業界の人手不足は続いており、九州では熊本地震に加えて、昨年7月の九州北部豪雨の発生で建設業者が復旧・復興に追われているとみている。

くまもと型復興住宅
熊本型復興住宅とは、熊本の地域産材を活用し地震に強く良質でコスト低減に配慮した木造住宅として熊本県地域型復興住宅推進協議会(県内建築団体等で構成された協議会)が認める住宅。「くまもと型復興住宅」は、被災者が住宅再建を無理なく進めることができるように、地域に根ざした工務店をはじめ住まいづくりのプロ集団「地域住宅生産者グループ」などが資金調達を含め、きめ細かく相談に乗って生活再建に寄与することが目的。県や市町村も後押ししている。

布田川断層を境に畑の向こう側が最大2.4m右へずれたもの・益城町上陳地区/地表地震断層(震災直後↑
文化庁の文化審議会は2017年11月、布田川断層帯の一部を国の天然記念物に登録するよう文部科学相に答申
2年後↓

 
 石垣が多数壊れるなど熊本城の被害は甚大(震災直後↑)(2年後↓

震災前の熊本城(大天守・小天守)・震災2年後の熊本城

熊本市内の水前寺成趣園(じょうじゅえん)の石灯籠(震災直後↑)(2年後↓

 
 地震後半分干上がった水前寺成趣園の池(震災直後↑)(2年後↓

 成趣園の入り口ではくまモンがお出迎え

本震で倒壊した益城町の家(震災直後↑)(2年後↓

益城町(震災直後↑)(2年後

 
震災直後↑)(2年後↓

 
マンションの渡り廊下損壊(震災直後 ↑ )(2年後↓

 
マンションの渡り廊下(震災直後↑)(2年後↓

 
地震の揺れによる大規模土石流が阿蘇大橋を落橋させた(震災直後↑
 
 地震の揺れによる大規模土石流で落下した阿蘇大橋(震災直後↑)(2年後↓
崩壊した斜面の防災工事が始まっていた(2年後↑
震災前から阿蘇大橋のたもとに設置されていた「まてまて地蔵尊」
20年間に59人が阿蘇大橋から投身自殺、思いとどまらせようと地元有志がお地蔵さん建立
熊本地震後は阿蘇大橋で亡くなった学生さんの死を悼む花が絶えない

 
東海大学農学部阿蘇キャンパス近くの学生アパートが崩壊し学生3人が犠牲になった(震災直後↑
倒壊した学生アパート村は撤去され、跡地に太陽発電のソーラーパネルが設置されている(2年後↓

撤去されて学生アパート村近くに新しい学生マンションが建てられている

 南阿蘇村リゾートタウンの地表地震断層(震災直後↑)(2年後↓



斜面の崩壊で5人が犠牲になった南阿蘇村河陽「高野台団地」

 高野台団地は平成12年に村が分譲地として整備。平成28年熊本地震による土砂崩れで全16戸が全半壊し5人が犠牲になった。8世帯が集団移転を希望していたが、世帯数などの条件を満たすことができずとん挫。阿蘇村ではこの高野台団地を震災遺構として保存・活用する事とし、団地内の12戸の宅地を買い取る方針を決めた。住民から異論は出ておらず、周辺を含め地滑りの跡などを示す公園とすることとしている。

地震に伴う斜面崩壊により、今後も大雨による土砂災害の警戒が必要

倒壊家屋解体跡の空き地が目立つ(益城町)

益城町庁舎(震災直後↑)(2年後↓

 この「くまモン」ネットアートは、NPO神戸 ひまわりの夢企画(代表 荒井 勣氏)が町民の元気アップにと地元の広安西小学校の子供たちとつくった労作です。神戸 ひまわりの夢企画は阪神・淡路大震災以来、支援の恩返しとして復興の歩みを始めた被災地各地で「瓦礫のまちにひまわりを」と大量の種や苗を配布するなどの活動をしています。被災地を元気にするためにと「知恵と汗を絞って」ユニークなアイデアで被災地支援しています。神戸の心と知恵がくまモンとともに益城の風に揺れながら、力強くエールをおくり町民たちへ逆境に立ち向かう勇気を与えています。
益城町仮設庁舎

損壊した下水管(震災直後↑)(2年後↓

 






新装熊本駅

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