講演予定・実績山村武彦プロフィール防災システム研究所
 
 
防災安全ゾーン(Safety Zone・セーフティゾーン)
(写真・文:防災・危機管理アドバイザー 山村武彦)

 「緊急地震速報が鳴ったとき、地震の揺れを感じた時、どんな行動を取るか?」と聞くと、「火を消し、机の下に身を隠す」などと答える人が多い。では、実際にそういうことをやっているか防犯カメラなどで見てみると、ほとんどの人がそんなことはしていない。多くの人は「アッ!地震」などと言いながら照明器具など天井などを見ているだけで何もしていない。「何もしませんでしたね」と聞くと、「大揺れになったら逃げようと思っていた」という。これはおかしい、本当に大揺れになったら歩くことも立つこともできなくなる可能性があるからである。地震の揺れには小さな縦揺れを伴うP波という初期微動と、激しい横揺れとなるS波・主要動がある。観測された複数の観測点でのP波などからコンピューターで地域ごとの想定震度(揺れの大きさ)を割り出し、発表されるのが緊急地震速報である。ただ、震源が近い場所では緊急地震速報の前に大揺れの前触れとして小さな揺れが始まる場合やいきなり大揺れに見舞われる場合もある。この時点では動けるが、S波の主要動になったら動けなくなる危険性がある。

まずは身の安全を図ることが大切。以前、地震発生時は机や食卓などの下に身を隠す事が奨励されていた。もちろんこれも間違いではない。それしか方法がない場合は落下物を避けるために机などの下に隠れることも身を守る行動の一つである。しかし、古い木造家屋であれば、家がつぶれると机もつぶれる危険性がある。つぶれないまでも、ドアが変形したり天井が落下したりした場合、テーブルの下にいたら閉じ込められてしまうおそれがある。その時、もし火災やガス漏れが発生すれば逃げ遅れる可能性もある。

 緊急地震速報が鳴ってから大揺れが来るまでの時間は通常数秒から十数秒程度といわれる。そこで家庭や職場にいて緊急地震速報が鳴ったときや地震の揺れを感じたときに一時的に退避できる「安全ゾーン」を予め設置しておくことが重要である。私が提唱する「安全ゾーン」とは、転倒落下物、ガラス飛散などの少ない、閉じ込められない場所。揺れが収まるまで安全ゾーンに退避して姿勢を低くして身を守る。大揺れが収まったら、さらに安全な指定避難場所などに避難する。つまり、安全ゾーンとは「いっとき避難場所」である。小さな揺れ(P波)の時や緊急地震速報直後はまだ動ける可能性が高い。大揺れになったら動けない。数秒から十秒以内に退避できる場所を予め設定することが重要。

 家庭であれば一般的安全ゾーンは玄関である。玄関は狭いのわりに太い柱が多く、モノが少ない、そしていざという時はドアを開けて避難路が確保できる。大地震だと建物が変形するとドアが変形し閉じ込められる恐れがある。これからは緊急地震速報や地震の揺れを感じたら、直ちに玄関に行きドアを開ける事である。ドアを開けても手を離すとしまってしまうので、サムターンやストッパーで手を放しても閉まらないようにしてから靴を履くこと。これからは、寝る前に玄関に家族分の靴を揃えてから寝る。それが、地震列島日本に住む者の作法ではなかろうか。


阪神・淡路大震災(1995年1月17日・撮影:山村)/古い木造家屋が倒壊
阪神・淡路大震災(1995年1月17日・撮影:山村)/1階がつぶれればテーブルもつぶれる
阪神・淡路大震災(1995年1月17日・撮影:山村)

阪神・淡路大震災(1995年1月17日・撮影:山村)/閉じ込められないように避難路を確保する

家庭の安全ゾーンのひとつは玄関です。玄関は比較的ものが置いてない場所で、ドアを開ければ避難路を確保できます。手を放しても閉まらないようにストッパーやサムターンを回します。それから靴を履くのです、それは周囲はガラスが散乱している可能性が高いからです。緊急地震速報が鳴ったらとりあえず玄関に行ってドアを開けるというルールをつくると共に、寝る前に家族分の履きやすい靴をそろえておくことが災害列島日本に住む作法だと思います。
閉じ込められた人を助ける訓練と併せて、小さな揺れや緊急地震速報が鳴ったら訓練と思って玄関に行ってドアを開ける癖をつけておくなど、普段から閉じ込められない訓練が大切です。

阪神・淡路大震災(1995年1月17日・撮影:山村)/ビルやマンションで中層階がつぶれる場合もある
古いビルやマンションであれば小さな揺れや緊急地震速報でドアを開け階段付近の安全ゾーンへ
その階が危険と思ったら、次の階へ脱出できるところで揺れが収まるまで待つ
揺れている最中階段を駆け下りるのは危険、揺れが収まってから階段で避難場所へ退避する

エレベーターホールが安全ゾーン
 階段室やエレベータ―ホールは火災発生時に煙や炎から守るために、法令で防火戸や防火シャッターなどで区画することが義務付けられています。こうした転倒落下物の少ない一定のスペースが確保できるところが安全ゾーンとして望ましいと思います。緊急地震速報が鳴ったら、ただちに安全ゾーンに退避し姿勢を低くし大揺れに備えます。また、上の画像には非常階段が見えますが、大地震で揺れている最中に階段を駆け下りるのは危険ですので、階段室前の安全ゾーンは、一斉に階段を駆け下りようとするのを制止する役割もあります。


売り場などの場合、通路と通路が交差している広いスペースが安全ゾーンとなります

出入り口付近に安全ゾーンを設定するのも、慌てて外へ飛び出すと危険(下の写真)という意味もあります
阪神・淡路大震災(1995年1月17日・撮影:山村)/安全そうなビルであれば外へ飛び出す方が危険
街中にいたら建物から離れるか安全そうな建物の中に入る

阪神・淡路大震災(1995年1月17日・撮影:山村)/地震時は車が暴走する恐れがあるので道路に飛び出さない

出入り口近くの広いスペースも安全ゾーン/揺れてる最中外へ飛び出させない「いっとき避難所」


リンクはフリーですが、文章・画像の無断転載はご遠慮願います 

防災システム研究所山村武彦プロフィール阪神・淡路大震災東日本大震災災害現地調査写真レポート
過去の講演実績/2016年2017年