2011年新燃岳噴火写真レポート
 
2018年・最近の新燃岳と硫黄山
文・写真/山村武彦
昨今、頻々と新燃岳や硫黄山の噴煙・噴火情報が入るようになったので
2011年の爆発的噴火から7年、2018年4月8日周辺状況を視察して回った
その11日後の2018年4月19日、えびの高原・硫黄山は250年ぶりに噴火した

気象庁の監視カメラがとらえた えびの高原・硫黄山(1.317m)の噴火
 2018年4月19日15時39分ごろ、硫黄山から約500メートルの噴煙が上がり、気象庁は火口周辺に大きな噴石が飛散したのを確認、噴火警戒レベルを2(火口周辺規制)から3(入山規制)に引き上げた。えびの市は火口から約2キロの立ち入りを規制。地下水がマグマの熱で急激に膨張したことで発生する水蒸気噴火とみられ、約2キロの範囲で大きな噴石の飛散や火砕流への警戒を呼び掛けている。
 有史以降硫黄山で確認されている噴火は2回のみ。2回ともマグマ噴火。最初の噴火は1300年 ~ 1500年頃。2度目の噴火は250年前の1768年、韓国岳の北西の斜面から溶岩が噴出して硫黄山溶岩流が形成されたという。

2018年4月8日のえびの高原・硫黄山(撮影:山村)↑

 えびの高原「えびのエコミュージアムセンター」/2018年4月8日↑
筆者の後ろが硫黄山・ここは硫黄山から水平距離で約1キロメートル
下の写真は4月19日の硫黄山↓/同じ場所の施設上部に設置された定点カメラ
★250年ぶりに硫黄山噴火↑(定点カメラ)
 2018年4月19日15時39分ごろ、えびの高原・硫黄山が噴火。気象庁は噴火警戒レベルを2(火口周辺規制)から3(入山規制)に引き上げた。硫黄山からおおむね2キロの範囲で火砕流や大きな噴石に注意するようよびかけている。そのため硫黄山から1キロメートル地点にある「えびのエコミュージアムセンター」は閉鎖された。福岡管区気象台によると、硫黄山の噴火は1768年以来。硫黄山は今年2月、火山活動が高まっているとしてレベルが2に引き上げられていた。レベルが3となるのは初めてという。

★山体が15㎝隆起
 国土地理院が地球観測衛星だいち2号のSARレーダー画像を解析した結果、噴火口がある南斜面と西側斜面で、山体が15㎝ほど隆起しているのがわかった。。硫黄山周辺では北東から南西方向にかけ山体隆起とみられる地殻変動が続いている。上記画像左は噴火前(3月9日0時)、右の画像は噴火後(3月20日)の画像。今回噴火した火口がある南側斜面と、火口の西側約300m地点でも局所的に地表から15㎝盛り上がっているのが確認されたという。
 気象庁によると、南側斜面では21日時点でも複数の火孔から噴煙が立ち上り、上空からの観測中にも火山ガスの周期が感じられた。周辺では灰色の熱泥が断続的に噴出していて監視カメラのレンズにまではねが飛んでいるという。

 一方、えびの高原硫黄山から5キロ南東に位置する新燃岳でも火山性地震が多い状態が続いていて、地下のマグマの上昇と関連している低周波地震も観測されている。4月12日夕方以降は、山体のわずかな隆起も確認されており、気象庁は引き続き硫黄山と新燃岳の両山に噴火警戒レベル3を発令し入山を禁止している。(4月21日現在)


 霧島山(きりしまやま)は、九州南部の宮崎県と鹿児島県県境付近に広がる火山群の総称であり、霧島連山、霧島連峰、霧島山地あるいは霧島火山群とも呼ばれる。最高峰の韓国岳(からくりだけ標高1,700m)と、霊峰高千穂峰(標高1,574m)の間や周辺に山々が連なって山塊を成している。有史以降も噴火を繰り返す活火山(気象庁の活火山ランク付けはB)であり、特に新燃岳と御鉢では活発な火山活動が続いている。火山噴火予知連絡会によって火山防災のために監視・観測体制の充実等の必要がある火山に選定されている。
 九州はユーラシアプレートの下にフィリピン海プレートが沈み込んでいる影響で多数の活火山があり、桜島をはじめ阿蘇山など活発な活動が続いている。
 


硫黄山から1キロメートルのえびのエコミュージアムセンター
 硫黄山はその名の通り硫黄分を多く含む火山性ガス(二酸化硫黄)が噴出する火山。かつては盛んに噴気が観察され、明治30年から昭和30年頃までは噴気を冷却して硫黄の採取が行われていた。2018年4月19日の噴火を受け、えびのエコミュージアムセンターはただちに閉館となった。
 活火山である霧島火山において最も新しい火山で、種類は溶岩ドームに分類される。韓国岳の北西、えびの高原に位置し、山体の西斜面に宮崎県道・鹿児島県道1号小林えびの高原牧園線が走る。


噴火時に退避する避難壕(噴火シェルター)

★日本の活火山は111火山
 昔は、今現在活動している、つまり噴火している火山を「活火山」、現在噴火していない火山は「休火山」あるいは「死火山」と呼ばれていた。 例えば、富士山のように歴史時代(文献による検証可能な時代)に噴火記録はあるものの、現在休んでいる火山のことを指して「休火山」、歴史時代の噴火記録がない火山のことを指して「死火山」という表現が使われていた。
 しかし、火山の活動の寿命は長く、数百年程度の休止期間はほんのつかの間の眠りでしかないということから、噴火記録のある火山や今後噴火する可能性がある火山を全て「活火山」と分類する考え方が1950年代から国際的に広まり、1960年代からは気象庁も噴火の記録のある火山をすべて活火山と呼ぶことにした。
 1975(昭和50)年には火山噴火予知連絡会が「噴火の記録のある火山及び現在活発な噴気活動のある火山」を活火山と定義して77火山を選定。この77火山は主として噴火記録がある火山が選ばれていたが、噴火記録の有無は人為的な要素に左右される一方、歴史記録がなくても火山噴出物の調査から比較的新しい噴火の証拠が見出されることも多くなり、 1991年(平成3)年には、火山噴火予知連絡会が活火山を「過去およそ2000年以内に噴火した火山及び現在活発な噴気活動のある火山」と定め、83火山を選定し、その後1996(平成8)年にはさらに3火山が追加され、活火山の数は86となった。
 しかし、数千年にわたって活動を休止した後に活動を再開した事例もあり、近年の火山学の発展に伴い過去1万年間の噴火履歴で活火山を定義するのが適当である との認識が国際的にも一般的になりつつあることから、2003(平成15)年に火山噴火予知連絡会は「概ね過去1慢年以内に噴火した火山及び現在活発な奮起活動のある火山」を活火山と定義しなおした。その定義で当初108だったが、2011年(平成23年)6月に2火山、2017年(平成29年)6月に1火山が新たに選定され、日本の活火山数は現在111火山となっている。

噴火警報レベル

火山登山者の注意事項
★活動火山対策特別措置法第11条第2項
 登山者等は、その立ち入ろうとする火山の爆発のおそれに関する情報の収集、関係者との連絡手段の確保その他の火山現象の発生時における円滑かつ迅速な避難のために必要な手段を講ずるよう努めるものとする。
★火山情報を集める
 登山者は、登ろうとする山が火山であるかを事前に確認する。火山であれば、その火山の噴火レベルの確認。気象庁の「火山登山者向け情報提供ページ
★登山届を提出する
 登山届制度が導入されている火山については、必ず登山届(登山計画書)を作成し提出する。現在はオンラインで登山計画書を作成し提出することができる。「日本山岳ガイド協会『Compass』」「日本山岳協会
★登山に必要なものを装備する
 火山の状態や特性、状況を勘案し、火山防災マップ、携帯電話等の通信機器、予備電源、雨具、タオル、ヘッドライト、ゴーグル、マスク、ヘルメット、非常食、飲料水、登山地図、コンパスなど
★常に注意を怠らず、情報はこまめに取りに行く
 噴気孔や奮起地帯のくぼ地などの危険な場所には絶対立ち入らない。登山中も気象庁のHP等からの情報「噴火速報」収集を怠らない。また、「火山の状況に関する解説情報の発表状況」などの情報をきめ細かく取りに行く。「国土交通省・防災情報提供センター
★火山性地震と火山性微動
 火山活動に伴う振動は大きく分けると「火山性地震」と「火山性微動」の二つ。火山性地震は、火山体やその付近で発生する地震の総称で、地下で何らかの破壊現象が起きて発生すると考えられている。一方「火山性微動」は、振動が数十秒から数分、時には数時間も継続し、始まりと終わりが明確でない波形の総称。地下のマグマ、ガス、熱水などの流体の移動が原因と考えられていて、噴火に伴う微動もある。


 


新燃岳展望台から見た新燃岳(1421m・2018年4月8日)
頂上の噴火口は溶岩が固まってふさいでいる状態で
周辺数か所から噴煙が上がっているものの、噴煙は小規模だが油断は禁物
2011年新燃岳爆発的噴火写真レポート



噴火後に雨が降ると降灰による土石流が警戒される



霧島温泉は新燃岳から6キロメートル離れているため噴火の影響は少ない


★丸尾の滝
 丸尾温泉から霧島神宮に向かう国道223号線の道沿いにある高さ23メートル、幅16メートルの豪壮華麗な滝。近くの林田温泉、硫黄谷温泉の温泉水を集めて流れる珍しい“湯の滝”で、秋は飛沫が紅葉に映え、冬には滝から湯けむりが立ち上る。丸尾には坂本龍馬や数多くの文人墨客が訪れたといわれる。新燃岳などが噴火するとこの滝の水に灰が混じる。

4月~5月が見ごろの霧島つつじ(花言葉:燃え上がる愛)/霧島神宮境内

|2011年新燃岳爆発的噴火|他の写真レポート

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