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台風23号・災害の教訓と課題(2004年10月25日更新)

決壊した円山川(豊岡市) 救助にあたる消防隊(豊岡市) 住民の救出作戦(出石町)

荒れ狂う室戸岬 崩壊・堤防と市営住宅(室戸市) 水の中消火活動(兵庫県社町)

死者69名、行方不明15名(10月22日現在)の犠牲者と住宅被害をもたらせた台風23号・災害の教訓と課題

台風ラッシュ(なぜ今年は台風が10個も上陸したのか)
2004年10月20日に四国に上陸した台風23号は、風速15m以上の強風圏が1600km・中心付近の最大瞬間風速は45m/s・中心付近で950hpsという「大型の強い台風」だった。室戸岬では瞬間最大風速は観測史上三番目となる59m/sを記録した。
6月から始まった台風上陸ラッシュは遂に史上最悪の10個を数えた。例年上陸する台風は平均2.5個であるから今年は実に4倍であり、しかも上陸台風の大部分がほぼ同じようなルートで日本列島を縦断し、執拗に大雨と強風を繰り返した。
これほどまでに多くの台風が上陸した背景には、異常に強い太平洋高気圧と高い海水温によるものとみられる。日本列島は世界最大の大陸(ユーラシア大陸)と世界最大の海(太平洋)の間に位置するため、世界有数の地震と台風が襲来する地勢である。そのため、アジアンジェットという欧州から大陸を経てやってくる強い偏西風と太平洋を渡ってくる偏東風とがぶつかり合い、気流が不安定に入り混じり気圧の変化が起こりやすい地域である。そして夏から秋にかけては太平洋高気圧がどっかりと居座る。赤道付近の太平洋やフィリッピン東洋上で生まれ、はじめ偏東風に乗り西に向かっていた台風は東経120〜130度付近で偏西風の影響を受け北に進路を変える。太平洋高気圧の縁に沿って北上し日本に近づいてくる。普通は北上するにしたがって海水温や気温低下によって台風の勢力は衰えることになる。しかし、今年は連日の酷暑の影響もあり周囲の海水温が1℃から1.5高かった。そのため、勢力を保ったまま(または勢力を増しながら)日本に上陸することが多かったのである。こうした海水温の高さを地球温暖化と結びつける向きもあるが、軽々に判断できるほどデータは蓄積されていない。ただ、従来のように台風襲来は9月一杯で収束するという常識は今後覆され、10月中11月中といえども台風襲来を警戒する必要が出てくると思われる。
「2004年・23号台風」災害の教訓と課題
1、台風ラッシュ、連続大雨は想定されていなかった?

繰り返し襲来する台風、そのたびに雨が長く降り続いた。そのため山間部の土壌や木々はこれ以上吸収できない状態にあり、地盤は多量の雨水を飲み込めるだけ飲み込み、含水状態はピークに達していた。そこへ大雨が降ると、それらは短時間に一気に河川押し寄せることとなる。その上、度重なる大雨で流されてきた土砂が堆積して河川の川床は押し上げられいた。つまり、いつでも洪水・土砂災害が発生しても不思議のない状態にあった。
日本列島は、そのほとんどが急峻地形のため、いったん大雨が降ると河川は急速に増水することとなる。しかし、河川、急傾斜地等の管理者は、こうした短期間に繰り返し大雨をもたらすことまでは想定しておらず、洪水・土砂災害対策はもとより、避難勧告発令基準さえ単発大雨にしか対応していないのが実情である。災害が発生するたびに「予想を上回る雨量、想定外の災害」と言い訳するが、大切なのは、過去に発生した災害だけを想定するのではなく、将来起こり得る最悪の災害に備えた対策なのである。考えられるのに考えず、想定できるのに想定しない硬直した災害想定、教条的地域防災計画・緊急行動マニュアルの見直しが急務である。
2、危険な場所にあった市営住宅
2004年10月20日午後2時40分ごろ、高知県室戸市室戸岬町の市営西高浜団地裏の堤防が高波を受け、幅30メートルにわたって崩壊。崩れた堤防のコンクリートの塊や流木を巻き込んだ波が3棟の市営住宅(木造平屋)を直撃して2棟が半壊。 同団地に住んでいた鉄橋幹夫さん(80)と妻の政子さん(89)、本多芳夫さん(75)の3人が死亡。近くの男性(58)と同団地の女性(52)が割れたガラスが腹部に刺さったり、全身打撲で重傷を負い、ほかに女性2人も軽傷を負った。 119番通報を受けて消防隊員が駆け付けた時には、堤防を越えた海水が堤防と住宅との間で滞留し、屋根の部分まで住宅が水没した状況だったといい、鉄橋さんと本多さんは水死、政子さんは家具などにはさまれた圧死とみられる。 高知地方気象台によると、室戸岬では午後2時すぎ、10月の観測記録としては史上3位の最大瞬間風速59メートルを記録した30分後の高波直撃だった。高波の高さについては、国土交通省高知港湾空港整備事務所が室戸市沖に設置している波高計が6階建てビルに相当する17メートル超の高波を観測している。
また、この防潮堤は鉄筋が入っていない旧来のコンクリート堤で、しかも高波の衝撃で「波返し」が崩壊するほど強度に欠け、つなぎ目などに亀裂が入っていたと推定されている。古い堤防はほとんどこうした強い高波に耐えられないものである。台風接近につれて海は大荒れで、室戸岬には高波襲来が想定されていたが、被害を受けた地域の避難勧告が出されたのは堤防が崩壊してから1時間後であった。風速が50mを超えたら、あるいは超える見込みがあれば高波対策が必要である。
平成16年台風23号災害概要

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