防災システム研究所山村武彦最近の現地調査阪神・淡路大震災新燃岳噴火災害


2011 ニュージーランド南部地震・現地調査写真リポート(リンクフリー)
写真・文/山村武彦

 |概要|建物被害(1)建物被害(2)液状化、地盤などボランティア・コミュニティその他の情報

概要

★地震発生時刻:2011年2月22日午後0時51分(12時51分42秒)
★地震の規模:マグニチュード6.3
★震源:ニュージーランド南島・クライストチャーチ市リトルトン附近
 (南緯43度34分58.8秒  東経172度42分36秒)
★震源の深さ:5Km
★死者・行方不明者:200人以上(うち日本人28人)
★倒壊建物:約1万棟
★ニュージーランド南部地震:一部ではこの地震を「カンタベリー地震」又は「クライストチャーチ地震」とも呼ばれている

震源地はクライストチャーチから車で20分のリトルトン附近
出典:THE PRESS(2月24日版)

私は3月1日〜5日まで現地調査を行いましたが・・・
CTVビル等は封鎖されていたため、主に周辺の被災状況等を取材・撮影しました
取材エリアはクライストチャーチ市街、ニューブライトン、震源地に近いリトルトンなどですが
いずれも多くの古い建物や耐震強度が低かったと思われる建物が崩壊し被害を出しています
地震国でありながら古い建物や不特定多数の出入りする建物の耐震強化・確認を怠った責任は極めて重いと感じました

犠牲者のご冥福をお祈りすると共に、ご家族と被災者に心よりお見舞い申し上げます
山村武彦

震源地に近いリトルトン市街地の教会

丘陵地・中腹の家を大岩が直撃、家の真ん中に穴をあけそのまま道路に落下(リトルトン郊外)

大岩に直撃・貫通された家

地震被害の特徴は古いレンガ建造物が損壊したこと
そして、2010年9月4日、8日の地震でダメージを受けていた建物がこの地震で決定的な被害を受けたこと
地震対策・耐震対策が軽視されていたことが被害を大きくしたものと思われる
また、クライストチャーチはエイボン川流域の湿地帯を埋め立ててできた街のため、各地で液状化現象が発生
しかし、液状化現象地域と、そうでない地域がまだら模様のように混在しているのも特徴である
こうした複雑な表層地盤が地表・建物の振動に複雑な影響を与えた可能性もある
隣接した建物でも、一方は崩壊し一方はガラス1枚割れないという明暗を生みだしている
また、レンガが崩れている建物のガラスが割れていないことも
地下構造、加速度成分、振動(周波数等)などに特異性があるのかもしれないが
一方で、1984年の耐震基準不適格及び耐震偽装・手抜き工事など違法性の疑いもある
今後、各方面の専門家による立体的・複眼的な精査検証を期待する

崩れたレンガ造りの家・ガラスが割れていないのが奇異に感じる
 NZでは国が設立した地震委員会(EQC)の地震保険制度がある。EQCが運営・管理する地震保険は、住宅の所有者が火災保険に加入すると自動的に付帯される。損害額のファーストロス部分を補償するもので、自然災害における被災者救済を目的としている。その料率は全国一律で、保険金額100NZドル(約6000円)につき5NZドル(約300円)。この保険の特徴として宅地地盤損壊も補償対象とすることにある。そしてEQCの支払能力を超過すると、政府が全額負担することとなっている。
 ファーストロスとは、ゼロからある限度額までの損害をいい、EQCの地震保険がこのファーストロス部分を補償する。例えば、NZにおける標準的住宅(21万NZドル)に70%の損害が発生し、損害額が14.7万NZドルと認定された場合、EQCの地震保険から9.9万NZドルが、民間保険会社から4.7万NZドル(免責金額制度がない場合)がそれぞれ支払われる。EQCの地震保険では地震、地すべり、噴火、地熱活動、津波による損害及びそれらに由来する火災損害が補償される。但し暴力行為、盗難、逸失利益、事業中断については自然災害を理由としていても補償はされない。EQCは国の監視のもとに基金を海外株式(30%)、政府債権(60%)、現金預金(10%)等で運用している。
 2010年9月に発生したM7.0の地震ではこれまでに35億NZドルを超える支払額になることが確実となっている。EQCによると、保険金の支払総額が15億MZドルまでの損害額をEQCが負担し、それを超える保険金支払総額の場合、40億NZドルまでを海外の再保険により回収しEQCが負担する。さらに40億NZドルを超える場合は基金残高が尽きるまでEQCが負担しそれを超える場合はNZ政府が無限に支払いを保証する仕組み。日本の地震保険加入率は、2010年現在で全国平均46%だが、NZの地震保険加入率は98%である。町の人に聞いたら、ほぼ全員加入していると答えた。どのくらいかけているかとの問いにも、「私は月50NZドル(約3000円)支払っているから、約115000NZドル(約690万円)補償される」と即答されたので驚きを通り越して感動した。だが、耐震対策はしていますか?の質問にほとんどが「NO」と答えたのには失望した。
 前回と今回の地震でEQC基金が15億NZドル程度減少しても、災害補償の仕組み継続には大きな影響はないようである。政府が関与する災害補償保険としては世界モデルとなるべき制度といわれる。

 保険制度の充実も重要だが、もっと大切なのが建物の耐震化であることをこの地震は大きな犠牲を払って尊い教訓を残した。日本にも被災者生活再建支援法などがあるが、いずれも事後の対処法である。中央防災会議等の試算によれば、向こう30年以内に発生確率の高い地震における想定合計経済損失額は308兆円以上とされる。それは災害発生後に係る最低限の公的費用ともいえる。しかし、ここには民間損失額はおろか人命や悲しみも入ってはいない。
 人命を失った後、308兆円を復旧にかけるより、事前にその10分の1の費用を対策にかけることで経済損失と人命損失は免れる。エコポイントが一段落したら「安全・安心ポイント制度」など、国を挙げて建物の耐震化・地震保険100%加入・防災意識啓発などの国民運動を展開すべきである。それが景気浮揚効果をもたらすことは論を待たない。
 日本国内で30年以内に地震で失う人命は10万人以上と推定される。日本が防災大国を自負するのであれば、決して看過できない想定である。こうした国家・国民の安全・危機管理は、政治家が超党派で取り組まなくてはならない最優先課題である。


休校ののお知らせ(レッドクリフス スクール)

カンタベリー・スチューデント・ボランティア・アーミー(UCVA)の若者たちが、がれき片づけに連日汗を流している
彼らは2010年9月の地震時に「フェイスブック」などを通じて集結し活動した実績を持つ
その数カ月後に実施された市議会議員選挙にUCVA代表のサム・ジョンソン氏が出馬し当選している
今回も地震直後から「フェイスブック」などでカンタベリー大学敷地内テント本部に集結を呼びかけ活動を開始
学生だけでなくビジネスマンなど自発的に登録した1500人のボランティアを毎日要請に応じ各地に送り出している
資金の多くは企業などのドネーションで、現在ドネーション合計は5万NZドルに上る
こうしたソーシャルネットワークは今後日本でも災害対策に有効利活用する方策を考えるべきである

被害の多かったシティセンターに隣接するハグレイ公園(東京ドーム38個分の広さ)
自然の樹木は、大小にかかわらず地震による被害皆無、被災直後は多くの被災者がここに避難した

過去地震災害を多く見てきたが、地震により樹木が倒れた例を見たことがない(地すべりを除く)
こうしたことから、地震国の建築設計思想は樹木からも学ぶべき点があるのではなかろうか

ニュージーランド南島の中心・カンタベリー平野とクライストチャーチ市街地

ニュージーランド南島に住む人は次のように自分たちの町を自慢する
町が美しいこと(被災地でもゴミがほとんど落ちていないのは驚き)
50Km圏内にゴルフ場が47カ所あること(フラットできれいなコースばかりとのこと)
飛行場に近いこと(クライストチャーチ市街地まで30分くらいで確かに近い)
ヘビ、クマ、ゴキブリがいないこと(南極に近く、冬が寒いからだという)
イギリス以外で一番イギリスに近いジェントルマン気風があること・・etc
(しかし、ほんとうに自慢できる国とは、災害にも強い安全で安心できる国ではなかろうか)

3月4日のクライストチャーチ市街の夜景(被害の多かったクライストチャーチを見下ろすカシミヤヒルズから)
右側の太い光の川はコロンボ通り、東側の暗い一角が被害の多かったシティセンター(封鎖区域)
封鎖区域に入れなかったので、苦肉の策で高いところから光のコントラストでエリアを特定しようと思った
しかし、寒いのと写真の腕の問題もあり上記の写真が精一杯だった

上記はクライストチャーチ・カシミヤヒルズの高級住宅(一部石垣が崩れた以外被害なし)
災害時は被害の大きいところだけが繰り返し報道されるため町が全滅しているような印象を与えるが
実際の被害は一部地域に集中していて、その他地域では被害軽微の場合が多い
マスコミが伝える一つ一つは事実でも、全体の真実を伝えていないこともある

厳しい警備態勢(約4Km四方のクライストチャーチ中心部・シティセンター周辺)
ニュージーランド警察官の厳格さは内外で有名である(ルールに厳しく融通が利かないという声も)

一般人立ち入り禁止のシティセンター内はゴーストタウン化している
この内側にあるCTVビル、大聖堂附近の狭い範囲がさらに厳重に封鎖されている

被害の多かったといわれるシティセンター内・メディアセンター附近の交差点に立ち
はっきり見える範囲で360度ぐるっと見回してみると
損壊しているように見える建物や黄色か赤色の立ち入り制限テープが貼られている建物をざっと数えてみた
43〜47棟中、少しでも損壊していると思われる建物は3〜5棟ほどしかない
(近寄れないため、1棟かどうかわからないものもある)
離れた所から表面外観だけで見たものであるから、極めて乱暴な見方ではあるが
門外漢がみても軒並み損壊でないことだけはよくわかる
無傷の建物に隣接する同じような造りの建物にクラックが入り、路上に瓦礫が散乱している
この明暗を分けた要因を、様々な角度からの科学的検証が強く望まれるところである
 報道関係者として認められメディアパスを受けたものは、一般立ち入り禁止区域にあるシティセンター内のメディアセンター(アートギャラリー・上の写真)までは入ることができる。しかし、シティセンター内のCTVビル、大聖堂など被害が大きかった数百メートル四方の地域は二次災害の恐れもあるとしてメディアも立ち入り禁止の封鎖区域となっている。この地域は外部からの撮影すら禁止である。封鎖区域及び立ち入り禁止区域に許可なく立ち入った場合、理由のいかんを問わず逮捕すると、警備当局は予め警告を発していた。
 そんな厳重警備のさなか、2月23日から24日かけての深夜、夜間外出禁止令が出されているにもかかわらず、日本のメディアスタッフ2人は、日本人被災者が入院する病院(封鎖区域)に侵入し拘束されるという事件を引き起こす。さらに翌日(2月25日)、立ち入り禁止区域に入り撮影しようとしたとして、日本の週刊誌記者とカメラマン計3人が一時拘束されカメラのデータを破壊される出来事もあった。そのほか日本のメディア関係者などがたびたび封鎖区域に入ろうとして、警備員から厳重注意を受けたという。こうしたこともあって警備陣には日本のメディア関係者には厳重注意するよう通知が出された(警察官談)そうだ。それに、警備にあたっている警察官はNZの警察官だけでなく、支援国から派遣された異国の警察官もいる。私が出会った警察官はインドネシアから来たと言っていた。こうした混成部隊だと、言葉が通じないこともありよけい杓子定規になることもあるようだ。

 また、言葉がよく分からなかったのかもしれないが、日本人記者の1人がボブ・パーカー クライストチャーチ市長の記者会見中に発言を求め、市長のコメント内容とかけ離れた日本人不明者に関わる質問を行い顰蹙を買ったという話も聞いた。不明者やご家族の心情を慮っての勇み足と思われるが、外国記者たちには、他の犠牲者や被災地のことより、自国人だけの安否優先は極めて異質・偏狭・偏執取材のように映っているようだ。

 NZは犠牲者の尊厳を最大限尊重保護する国であるという。自然災害とはいえ、自国で多くの人々を犠牲にし遭難させてしまったことへの責任感を関係者は強く感じている。その家族にも申し訳ないという気持ちが非常に強い。そしてこれ以上迷惑をかけることを恐れているいう。そのためもあってか生死や犠牲者の特定には極めて慎重に対処し、個人情報の保護なども徹底させている。このことが、遭難現場地域の厳重封鎖などもにつながっている。(政府関係者談)。

 情報開示しないNZ側にも一端の責任はあるが、郷に入っては郷に従うこともマナーである。取材する側にはお国柄や風土に配慮した最低限のマナーとモラルが要求される。
 許可証を提示した時、私が日本人と知った警察官が明らかに態度を硬化させた。「また日本人が何かしでかしたか」と背筋がぞっとした。こんな経験は過去150回ほどの被災地調査でも初めてである。腹立たしくも情けない出来事だった。
 心ない一部記者の行動が、結果として親日的なNZにおける日本の評価を一時的にせよ悪化させたことは事実であり、滞在する多くの日本人に肩身の狭い思いをさせていることも想像に難くない。
メディアセンターにはトイレカーが配備されていた
トイレカーのトイレは水洗で、清潔が保たれている

被災地で一般人が使う仮設トイレ
日本国際緊急援助隊の活動と健康を支えたお弁当(上の写真はTEPPANYAKI TAKAOの店内)
加藤静さん(左)と店主の奥さんの高尾朝子さん(右)
ピーク時(3月1日ごろ)は毎回4人で270食のお弁当をつくった
その間、全ての注文を断り、故国から駆けつけた隊員たちのために不眠不休で取り組んだ
「下痢など起こさせては恥」と、衛生管理を徹底しつつ
流通が途絶える中、限られた食材で栄養バランスと味を工夫した
一方で毎回時間とも戦わなければならなかった
今は一次隊が帰ったので注文は100食程度になった(3月4日時点)
しかし、最後の一人が任務を全うし帰国するまで、少しも気を緩められないという
NZに行ったら、TEPPANYAKI TAKAOで、熱い日本人魂と心意気をぜひ味わってほしい
52 Charles St (Riverside Shopping Centre) Kaiapoi Waimakariri 03-327 0175

 
日本隊31名とNZ隊代表2名は、ビル前に整列し犠牲者に2分間の黙とうを捧げた(左上)(2011年3月6日)
右上の写真は地震前のCTVビル

ニュージーランド警察幹部は6日の記者会見で
地震の死者が166人になったと発表。最終的な死者数は約200人以上になる見通しという。
日本人28人もその中に含まれている
(左上画像提供:国際緊急援助隊・右上画像提供:CTV)

日本の国際緊急援助隊第2陣の沼田行雄団長は
クライストチャーチ市の語学学校「キングズ・エデュケーション」が入居する
カンタベリーテレビ(CTV)ビル倒壊現場での遺留品捜索や
がれき撤去などの作業が5日夕に終わったと明らかにした(3月6日)

隊員とその関係者の方々、ご苦労様でした!そしてありがとうございました。

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