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その他の現地調査写真レポート


2013年 オクラホマ竜巻災害(OKLAHOMA TORNADE DISASTER)
現地調査写真レポート/撮影・文:山村武彦

5月20日の竜巻/画像提供:Tornado Titans.com

★巨大竜巻
 2013年5月20日と5月31日、1か月間に2回も竜巻に襲われたオクラホマ州の犠牲者は合計34人に上り、約12000棟以上の建物が全半壊の被害を受けた。アメリカ国立気象局は、竜巻の強さを表す改良藤田スケール(Enhanced Fujita scale・通称EFスケール又はEF-Scale)で、0~5まで6階級のうち、二つともEF-5の最大・最強の竜巻と発表した。オクラホマ州立大学では最大風速90m以上(210mph)をレーダーで観測している。5月20日14時40分頃に発生した竜巻はオクラホマシティ・ダウンタウンから南東約20Kmのクリーブランド郡ムーアシティ(人口55,081人)に大きなダメージ(死者24人)を与えた。また、5月31日の竜巻ではオクラホマシティから西南27Kmのカナディアン郡ユニオンシティ(人口約1,375人)でダメージ(死者10人)が多かった。FEMA(連邦緊急事態庁)では被害総額を約20億ドル(約2000億円)と推定している。 この竜巻に関連する嵐によって放出されたエネルギーは広島型原爆の600倍 (4×1016) と推定されている。アメリカでは年間平均約1,300個の竜巻が発生しているが、アメリカ国立気象局が改良藤田スケールを採用した2007年からの6年間でEF-5を記録した竜巻は今回で10個目となる。
★迅速だった竜巻警報
 二つの竜巻は従来の竜巻の概念(短時間・直線状・局所的被害)が打ち砕かれるほど巨大なものであった。5月20日15時16分にムーアを竜巻が直撃する36分前、地面に到達する5分前の14時40分、アメリカ国立気象局はムーアへの竜巻直撃の警報を発した。これまでの平均14分前ということを考えると異例の早い予測であった。これは、きわめて巨大で急速な気象変化が顕著であったことを物語っている。竜巻は15時35分にムーアの東7.7km (4.8mi) のところで地面から離れ消滅するまでの50分間に27km (17mi) 移動し、最大2.1km (1.3mi) 幅に達した。竜巻の発生メカニズムは全て解明されているわけではないため、局所的・ゲリラ的に発生する竜巻をタイミングよく正確に地域を特定して警報を出すことは極めて困難であった。しかし、今回はあまりにも巨大なスーパーセルであり、160基以上設置されているドップラーレーダーの情報解析が当を得て迅速な警報発令につながった。しかし、それでも多くの犠牲者を出したのは小学校や道路沿いにおけるストームシェルターの不足など、竜巻避難場所の不足にあったと思われる。今後、宿命的竜巻多発エリアにおける個人及び公的施設のシェルター拡充が課題となる。
★多重渦竜巻(Multiple vortex tornado)
 5月31日のユニオンシティ周辺を襲った竜巻は、少なくとも3個(5個という説もある)の竜巻が同時に発生し幅約4.1kmに広がったまま平均時速約48Km/hのスピードで移動した広範激烈竜巻であったと発表されている。現地で建物被害などの集中度と分布状況をみると、5月20日に発生したムーアの竜巻はほぼ明確な線上に被害が集中しているが、5月31日のユニオンシティ周辺の竜巻被害は幅4Kmの間で被害が激しい場所はいくつかのブロックが散在している。また、「竜巻はいくつかに分かれて小さなジャンプを繰り返しながら通り過ぎた」と言ったのはユニオンシティ消防署のダビッドチーフである。こうした証言からも今回の竜巻が多重渦竜巻(Multiple vortex tornado)である可能性が高い、多重渦竜巻とは複数の渦がまとまって活動する竜巻群をいう。今回のユニオンシティ周辺の状況からみると、大きな竜巻(親渦)の周囲を小さな竜巻(小渦)が取り囲み回りながら移動しいったものと推定される。
★人口密度21.1人/㎢、日本の1/16
 オクラホマはアメリカ合衆国の中南部、北緯33°37′~37°に位置する州。人口は3,751,351人。州都はオクラホマシティ。東西の幅645Km、南北の長さ370Km。合衆国50州の中で、面積では第20位、人口では第28位。人口密度21.1人/㎢(日本343人/㎢)。これほど巨大な竜巻で犠牲者の数がこの程度だったのは人口密度が低い地域であったからだと考える。もし、日本でこの規模の竜巻が発生すれば10倍~20倍の被害を出すと思われる。
 オクラホマは、北はコロラド州とカンザス州に接し、東はミズーリ州とアーカンソー州、西はニューメキシコ州、南はテキサス州に接している。州名はネィティブアメリカン(インディアン族)のチョクトー族の言葉でokla(赤い)humma(人々)を合わせた「赤い人々」を意味する言葉から名づけられた。1707年11月16日、インディアン準州とオクラホマ準州を合わせ合衆国46番目の州となった。元々は全米のインディアン部族を強制移住させる目的でつくられた州で、他の州に比べ、インディアン保留地が非常に多い州である。
オクラホマ州は天然ガス、石油、農業の生産高が高く、また航空機、エネルギー、通信、バイオテクノロジーに経済基盤があり成長率の高い州である。一人あたりの収入成長率と州総生産の成長率では米国内でもトップクラスとなっている。

★竜巻街道
 地勢的リスクとしては、メキシコ湾からの湿った空気(緑色・WARM MOIST AIR)、ロッキー山脈とアバラチア山脈との間の乾いた熱い大地とカナダ方面からの上空の乾いた寒気(青色・COLD DRY AIR)の影響でスーパーセルによる竜巻や雷雨が発生しやすく、隣接州と共にこの地域は竜巻街道(赤色・TORNADO ALLEY)と呼ばれている。
 ちなみに国立気候データセンターの集計によると、平方マイルあたりの竜巻の数は1位がカンザス州でオクラホマ州は第2位。全米で発生する竜巻の約90%がこの竜巻街道で発生している。このため竜巻街道周辺では屋根、建物、基礎などの接続方法など他の地域と比べ建築基準法が厳しくなっている。
 その他の予防措置としてはストームシェルターの設置や竜巻警報サイレンの設備建設に連邦政府や州から助成措置が講じられている。5月31日の時はユニオンシティで竜巻襲来の15分前に竜巻警報サイレンが吹鳴されている。
オクラホマ州の地図(左図)で、△印がオクラホマシティ、〇印がカナディアン郡(ユニオンシティ)、□印がクリーブランド郡(ムーアシティ)。
5月20日は□印のムーアが、5月31日には〇印のユニオンシティが襲われた場所。ムーアシティの市長は、新規の住宅建設に避難施設の設置を義務化する条例の制定を検討していると話した。

犠牲者のご冥福をお祈り申し上げます
半旗を掲げ竜巻の犠牲者を悼む州都オクラホマシティ
メディカルセンター(ムーアシティ)

吹き飛ばされた車(竜巻の際、車での移動は危険)/ムーアシティ





メディカルセンター(ムーアシティ)

飛ばされてきた住宅の残骸





★アメリカの災害保険は、火災のほか竜巻、ハリケーン、洪水、山火事、雹(ひょう)等が対象
一般的な保険だと年間掛け金2500ドル(約25万円)で、下記のように4つのカテゴリーがカバーされる
1、建物(全壊した場合、再建全額費用)
2、建物に付随する設備等(ガレージ等)の再建全額費用
3、家財(車も含む)の購入費用(ただしトラクターなど、仕事に使うものは対象とされない)
4、災害によって困難を生じた生活費用(家が再建されるまでの一定期間、住宅レンタル費用等)
原則として、悪意のない自己申告に基づいて支払われる

家を壊されてもアメリカンジョークは忘れない





生徒7人が犠牲になったプラザタワー小学校(ムーアシティ)
ここにはシェルターはなかった。身を寄せた校舎の壁が崩れ生徒たちはその下敷きになった
子供たちの死を悼み哀しむ人々、冥福を祈る姿が後を絶たない
プラザタワー小学校から50mほどの住宅の庭にあったストームシェルター
(シェルター上部の通気口が破壊されており竜巻の強さを物語っている)
住民の話によるとこのシェルターに避難した5人は全員無事だったという

トルネードアレイではストームシェルターが設置されている家も多い
1基2500ドル(約25万円・20年前は15万円)
シェルター内は2.4m四方で9人が避難できるという

竜巻でなくなった町を見に来た人たち(現地ではトルネードツアーと呼んでいた)

竜巻で倒れた電柱から電線などを盗もうとして警官に事情聴取を受ける火事場(?)泥棒
(竜巻災害直後、少数だが略奪もあったという)

全米から多くのボランティアが駆け付けた
災害直後はルート66号などが駆けつけるボランティアの車で大渋滞を起こした
ジムさんはニューメキシコ州の南パスティスト教会に所属している。彼は自分のトレーラーで重機を運んできた
筆者の左側の女性はオクラホマ大学建築研究所に勤めるエイミーさん、彼女は3日間有給休暇を取ってボランティアに参加している


ハビタット(Habitat for Homanity)は、ジミーカーター元大統領がつくったボランティア団体
慈善活動をパートナーシップとして活動することを目的としている
主に住宅建築活動、被災住宅再建支援活動などを行っている
日本におけるハビタット
 
土日に合わせて有給休暇をもらってやってくるボランティアが多い

多くのボランティアは自給自足を旨として、トレーラーハウスや倉庫と一緒にやってくる

彼らはボランティを支援するボランティア(Disaster Relief)
汗を流すボランティアたちに水や食料を提供している

この人は個人的にボランティア支援を行っている
熱中症などに配慮しアイスボックスに冷たい飲み物を用意して
「ありがとう!ご苦労さま、冷たい飲み物どうぞ!」と声をかけている




Ms. Diane Fodness
American Red Cross(米国赤十字社)・Executive Directer
「ここにはたくさんの個人やボランティア団体が来て、登録し、被災地支援に出かけます」
ムーアハイスクール内に設けられたボランティアセンター
赤十字社、行政、各種ボランティア団体が一堂に集まっている
ボランティアはいったんここで登録してから各地へ出かけていく
ボランティアセンターに寄せられたドネーション(寄付)の飲み物

壊されたサイロ
石油施設にも被害
風力発電設備のプロペラがなくなった(右側)

ムーア市役所(市役所の駐車場にはFEMA(連邦緊急事態庁)の指令車などが停まっていた)
市役所の入り口ドアには武器持ち込み禁止標識
ムーア市・危機管理責任者に話を聴いた
Emergency Management&Communications/MR. Gayland Kitch (Emergency Manager)
過去にない巨大な竜巻だった。3日間で50個の竜巻が発生した。
異常気象によるものか毎年竜巻が増加し巨大化しているように思うと語った

ユニオンシティ消防署(Volunteer Fire Dept)Fire chief:MR. David Jones(中央)とMR. Darrel F. Wilkerson Jr.(左側)
彼らは普段は農業に従事し、火災や災害時に出動し闘うボランティア(町を守る使命感にあふれ。隊員17人の士気は高い)
ユニオンシティ消防署のサイレンは市内に7カ所ある/5月31日も竜巻襲来15分前に竜巻警報(3分)が鳴り響いた
5月20日の場合は直撃の36分前、地面に到達する5分前の14時40分に、アメリカ国立気象局はムーアへの竜巻直撃の警報を発している
竜巻はユニオンシティの西側を弧を描くように突き抜けたとユニオン消防署のチーフのダビッドさんが説明
ひとつのメッシュ(四角に区切った面積)が2キロメートル四方、メッシュ二つ分の幅がある巨大な竜巻だったという
ダビッドさんが見せてくれたのは、3人が死亡したストームチェイサー(トルネードハンター)達の車の写真
ストームチェイサー(竜巻追跡人)とは、竜巻を追いかけ動画などを撮影しテレビ局やネットなどに提供しているプロ集団
救助に向かったが、発見した時はすでに死亡していたとのこと
死亡したのは竜巻調査会社「Twistex」創業者のティム・サマラスさん(55才・左側)、その息子ポールさん(24才・中央)と
同社の気象学者カール・ヤングさん(45才・右側)の3人で、これまでに多くのリアルな映像を提供してきた
著名なストームチェイサーで、ナショナルジオグラフィックに登場するなど竜巻研究にも寄与してきた
ユニオンシティ消防署の人が案内してくれたのは、ストームチェイサーたちが車ごと竜巻に巻き込まれた場所
ここはオクラホマシティから約30Km西方のエルレノ地区、周囲の樹木がなぎ倒されていて、竜巻の激しさを物語っていた
 
二階が飛ばされた家(ユニオンシティ)下はその内部

屋根が飛ばされたというより2階が飛ばされた

 
オクラホマの郊外に行くと銃を下げている人も珍しくない(ユニオンシティ)
敷地内に入る場合は明確な了承(意思表示)を得てからでないと撃たれる危険がある
彼は「竜巻で家や鶏舎が壊れ鳥が野放しになっているため、それをねらって野犬や山猫、不埒なやつらも来るかもしれない」と語り
右に銃、左の腰にはナイフを下げ、ボランティアにも油断のない目を光らせていた
オクラホマはカウボーイの町

オクラホマシティ連邦政府ビル跡地(現オクラホマナショナルパーク)
1995年4月19日、オクラホマ州の州都オクラホマシティで連邦政府ビルがテロリストによって
9階建ての連邦政府ビルが爆破され、子供19人を含む168人が死亡、800人以上が負傷する大惨事となった
爆破された連邦政府ビル跡は鎮魂の池となっている
オクラホマシティ連邦政府ビル爆破事件跡地に犠牲数を示す椅子がモニュメントとして置かれている
小さな19個の椅子は犠牲になった19人の子供たちを悼んでいる

自然災害よりテロ対策?
今回オクラホマの竜巻災害現地調査を通じ多くの人たちと話をすることができた
オクラホマがこれほどの哀しみに包まれるのは連邦政府ビル爆破テロ事件以来だという人も多かった
その人たちはこの爆破事件、そして、「9.11」がアメリカの自然災害対策の方向を変えたという
それまで、災害対策で中心的役割を果たしていたFEMA(米国緊急事態庁)は大統領直轄部隊から
9.11のあとは国家安全保障省傘下に組み込まれ、予算も大幅に削減された(クリントン大統領時代の1/10ともいわれる)
自然災害対策よりテロ対策に連邦政府は重点を置くようになったと・・・
アメリカでは年間平均1300個の竜巻が襲い、約100人死亡し、1500人以上が負傷しているが
竜巻街道に対するシェルター建設支援も掛け声ばかりで予算が少なく、実効性に欠けるともいう
今後、連邦政府における竜巻対策への対応を現地関係者は諦めと一縷の期待を込めて見守っている
日本の主要都市とオクラホマはほぼ同緯度、対岸の火事ではない
福岡・北九州(北緯33°)から福島・栃木・茨城・新潟(北緯37°)まで、日本の主要都市はすべてオクラホマと同緯度にある
地球規模の異常気象時代に突入した今日、アメリカの竜巻災害は決して対岸の火事ではない
毎年約20個の竜巻が起きている日本では、巨大な竜巻は起こらないと決めつけているが
オクラホマと比較し人口密度16倍の日本で竜巻が都市部を襲えば、中規模でも大きな被害を出す可能性がある
国や自治体は異常気象時代に即した実践的竜巻防災対策(警報システム、避難場所の整備等)を急ぐべきである
山村武彦/2013年6月

 上空から見たオクラホマ/小麦畑・牧草地・円形農場がどこまでも続く

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