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ロシア地下鉄爆破テロ事件(2004年2月6日)


モスクワの地下鉄爆弾テロで50人?死亡、重軽傷約150人
 2004年2月6日午前8時30分(日本時間午後2時30分)ころ、モスクワ中心部を走る地下鉄2号線・ザモスクボレツカヤ線で爆発事件が発生した。地下鉄環状線を結ぶアフトザボツカヤ駅からバベレツカヤ駅に向かっていた8両編成の地下鉄2両目で突然爆発が起こった。車内はラッシュ時の満員状態で、ガラスや肉片が飛び散り阿鼻叫喚の地獄絵と化した。車両の一部が炎上し、車内とトンネル内に煙が充満。多くの乗客は窓を割って車外に脱出、700人以上がバベレツカヤ駅まで徒歩で避難した。バベレツカヤ駅は環状線の乗換駅として、朝夕のラッシュ時はモスクワでも最も混雑する駅のひとつ。
ロシア政府は死者数を隠ぺい?
 現在、死者は50人、重軽傷150人と発表されているが、爆発の起きた2両目の車両に乗っていたのは約200人ほどだが、そのうち生存者は50人にも満たないとの情報もある。政府に批判的な新聞ノバヤ・ガゼータ紙は、市当局者の証言として、治安警察「連邦保安局・FSB」がルシコフ市長らに死者の名簿公表を禁じたと報じた。同紙はさらに遺体収容作業にあたった医療関係者の話として、死者は100人から140人と伝えて、政府は国民の動揺を避けるために死者の数を意図的に少なく発表していると非難している。また、ロシアの有力紙イズベスチャも、遺体安置所職員の「死者は50人を下回ることはない」という話を報じている。こうした隠ぺい工作疑惑が深まれば、3月の大統領選挙で野党候補に絶好の政権批判材料を与えることになる。
通勤時間帯を狙った卑劣な無差別テロ?
 プーチン大統領は「マスハドフ・チェチェン共和国元大統領と、その一派がこのテロに関わっていることはわかっている。われわれはテロリストとは交渉しない」と述べ、ロシアからの独立闘争を続けるチェチェンのテロリストとの犯行の見方を示した。防犯ビデオなどから容疑者のモンタージュ写真が作成されているが、女の自爆テロとの情報もあり、犯人はまだ特定されていない。モスクワではこのところチェチェン独立を求める勢力によるものと見られる自爆テロが頻発している。今回の爆弾テロも、3月の大統領選挙を前にして混乱を狙ったものとの見方もある。
日本でもテロの警戒を強める必要がある
 イラクへの自衛隊派遣により、アルカイダを名乗る人物が日本へのテロ攻撃を予告している。チェチェンとアルカイダとは一見無関係のように思えるが、これらのテロ組織はお互いの犯行や手法に触発されて、類似のテロを仕掛ける可能性がある。警察は米軍施設、米国大使館、空港などの警備を強化したが、市民が利用する施設などの細かい警備までは手が届かない。爆弾テロはなくとも、放火や毒性ガス散布などの攻撃は十分考えられる。乗客一人一人が不審者などに注意し合い、自衛措置を講じる必要がある。ロシアの地下鉄は核戦争を想定し核シェルター代わりに造られたため、地下10階ほどの大深度構造となっている。これは東京の大江戸線もほぼ同じ深さである。深いところにある地下鉄はいざっという時、地上に避難するまでに相当の時間を要することになる。火災などの時はその分煙の中に長時間さらされる。また、さきの韓国地下鉄放火事件後の緊急調査で、日本の多数の地下鉄は、排煙設備、避難階段などに不備があることが判明している。便利さの隣には常にリスクが潜んでいることを忘れてはならないし、地下鉄に限らず新幹線などでも絶対の安全は無いものと思わなければならない。今、自分たちにできるのは、通勤通学途上で「もし、ここで地震や火災が発生したらどうなる?パニックに巻き込まれないようにするには?非常通報装置、誘導灯、非常口、非常階段、地上への避難方法」などを予めシュミレーションしておくことが大切。そして、せめて自分のバッグには最低限の自分を守る道具(懐中電灯、防煙マスク、笛)などを用意するセルフでフェンスの覚悟が求められている。
自爆テロがなぜ繰り返されるのか?
 「テロに屈しない」「テロとの戦い」と口で言うことは可能だが、それでテロがなくなるとは思えない。イラクでなぜテロが頻発するのか、中東やチェチェンに何があるのか、なぜテロ行為に走るのかを考え、対立の本質を解決しない限りテロは根絶できない。イスラエルとパレスチナの泥沼の報復合戦、イスラム社会への弾圧、チェチェン独立運動弾圧など様々な要因の根本に目を向ける必要がある。「テロにつくか、テロとの戦いにつくか」の二者択一だけでテロ問題は解決しない。無実の人間を殺戮する無差別テロは卑劣であり、決して許されざる憎むべき犯罪である。しかし、なぜ、命を賭けてまで自爆テロに訴えるのか、無実の人々が犠牲ならないために為政者がそれを考えなければならない時期に来ている。防災アドバイザー山村武彦


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