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インドネシア・ジャワ島中部地震・現地調査報告/防災アドバイザー 山村武彦
ベッドを埋め尽くした瓦礫
3日経っても救援物資がひとつも届いていない(バンドゥル県ジュテュス村)2006年5月30日・撮影山村
路上で募金を集める高校生たち(ソロ〜バンドゥル)2006年5月30日・撮影山村
筆者(山村武彦)の後ろはジョグジャカルタの市立大学(2006年5月31日)
 
仮設の地元保健所(下痢を訴える子供が多い)2006年5月30日・撮影山村
ラテン県・崩壊したジャブン小学校2006年5月30日・撮影山村

  
地震の規模と震源の深さなど再修正(米国地質調査所)
米地質調査所(USGS)は震源の深さを当初発表の約17キロから約10キロに修正、その後約35キロと再修正。また、地震の規模を示すマグニチュード(M)を6.2から6.3に訂正した。
6234人死亡・20万人家を失う(津波なし)
 2006年5月27日(土)午前5時54分(日本時間午前7時54分)、ジャカルタから560Km離れたジャワ島中部ジョクジャカルタ南方約10Km〜16Kmのバンドゥル県を震源とするマグニチュード6.3の地震が発生。震源の深さは約10Km、阪神・淡路大震災と同じ直下型の活断層地震と推定されている。この地震による津波は発生していない。
 ジョグジャカルタ特別州(人口300万人)の首都ジョグジャカルタ市から16KMのバントゥル県(人口90万人)などで多くの建物が倒壊し、これまでに6432人が建物の下敷きなどによる死亡が確認され、約18000人が負傷。家を失った人たちは20万人を超えると推定されている。周辺都市に通じる道路は亀裂が走り、断水、停電している。そして余震は31日までに500回も続いている。政府関係者は、死者は最悪6000人を超える可能性があると述べている。(6月1日22:35現在)

「津波が来る」の噂に一時パニック、交通事故も
地震直後に津波が襲ってくるという噂が流れ、住民は一時パニックに陥ったが警察官等が津波は来ないと知らせ、すぐに平静を取り戻した。パニックになった人たちが家族をバイクに乗せていっせいに道路に殺到したため、各地で交通事故も起きた。

M6.3で被害甚大になった理由の考察
 震源地は当初USGSが発表した位置より内陸のバンドゥル付近で、震源の深さも10Kmと非常に浅い地震だったので。
@火山灰堆積地が多く地盤によって加速度が増幅された。
A水分を含んだ低湿地帯が多く地盤が弱かった。
B台風がこない地域のため住宅がきわめて脆弱だったこと。
C柱がなく壁で持たせた家煉瓦間は粘着性セメントの少ない砂泥で埋めてあった。
D死者数が多かったのは連休の早朝で、寝ていた人が多かった。
E120年間地震を経験しておらず、防災意識がきわめて低かった。
 
 

 
上の左写真は陸軍士官学校の生徒たち 右はラテン県ジャブン小学校の校長先生(後ろは壊れた校舎)
 
左上の6畳分のテントに14人が交代で寝ている 右はTV局のボランティアセンターに届いた救援物資
救援物資は届かず、汚物は川に流していた。
私は2日後の29日から現地調査を実施した。被災地は当初発表された被災区域よりも大きく広がっていて、救援物資が届いていない被災地域は半数以上に上っている。そうした地域ではトイレが破壊され中小河川に汚物を流していた。毎日30度を越える中、衛生
状態悪化が懸念される。

ジョクジャカルタのAdi Sutijipto空港28日再開
滑走路が破損し航空機の発着を中止していたジョクジャカルタの空港は5月28日未明までに補修を完了。午後にも一部運航を再開、援助物資の搬送を優先や救援隊を受け入れている。(5月28日12:00現在)
日本人女性1人負傷
在ジャカルタ日本総領事館によると、ジョクジャカルタ特別州には日本人91人が居留、このうち28日夜までに90人の無事を確認した。日本外務省海外邦人安全課によると、同州内に住む30代後半の邦人女性は、落下物で頭部に軽傷を負ったとの情報が寄せられているという。日本外務省は医療関係者などで構成する緊急援助チームを28日朝、現地に派遣。在留邦人や日本人旅行客の安否確認を急ぐよう現地の大使館などに指示した。(5月28日22:30現在)

日本人観光客無事

 HISによると、この日朝にバリ島のデンパサルからジョクジャカルタに向かった航空機に同社の邦人ツアー客5人が乗っていた。地震の影響でジョクジャカルタの空港に降りられず、西に50キロ離れたソロの空港に緊急着陸した。近畿日本ツーリストは、ボロブドゥールへのツアー参加者8人全員の無事を確認したという。クラブツーリズムでは、バリ島旅行のオプションでジョクジャカルタに行くツアーに18人が参加していたが、全員の無事を確認した。
外務省などによると、インドネシアに在留している邦人は約1万1千人で、ジャワ島のあるジャカルタ総領事館管内には約8千人がいる。日本からの旅行者は、01年以降、年間45万〜62万人。インドネシアは25日から28日まで大型連休に当たり、在留外国人を含む多数の観光客がジョクジャカルタを訪れていた(5月28日22:00現在)
大統領が陣頭指揮
 ユドヨノ大統領は国軍5000人の出動を命じると共に、地震発生後10時間後に被災地入りし陣頭指揮に当たった。16:00にソロのAdi Sumarmo空港に到着。ジョグジャカルタのAdi Sutjipto空港は地震による被害のため閉鎖されており、ソロの空港に降りた。大統領に随行したのは、大統領夫人、Purnomo Yusgiantoroエネルギ−・鉱業資源大臣、Bambang Sudibyo教育相、Polhukam Widodo AS政治治安調整相他。(5月28日22:00現在)
世界遺産・甚大損傷
 ジョクジャカルタは世界遺産の仏教寺院ボロブドゥール遺跡とヒンドゥー寺院プランバナン遺跡が近くにあり、インドネシア最大の観光都市の一つ。遺跡は200以上の寺院からなるが世界遺産遺跡プランバナン寺院群も甚大な損害を被った。特にブラーマ(Brahma)寺院は損傷が激しく修復するには長期間かかると予想されている。また、同地域観光の中心であるプランバナン寺院群のある観光公園はこの地震の被害によって閉鎖され、プランバナン寺院群を背景に上演されるラーマーヤナ劇と共にいつ再開できるか未定。プランバナン寺院以外にも周辺遺跡に大きな被害が出ている模様。(5月28日12:00現在)
国際社会の緊急支援活動
 マレーシア政府は被災者救援のため、救援・医療チームを同地へ派遣すると発表した。地震当日の27日夜、マレーシア災害救済機関の職員56人、医師5人そして数名の救急医療隊員が空軍機でジョグジャカルタへ向かった。また、このチームは医薬品・毛布などの支援必需物資約1トンを持ち込む予定。マレーシアのNajib Razak副首相は『インドネシア側の求めがあれば、更に支援を追加する用意がある』と話している。
 国連児童基金(ユニセフ)は27日、インドネシア・ジャワ島中部地震で、テント約2000張りや臨時の学校設営用物資などの緊急支援を行う準備があると表明した。すでに、被災者が必要とするものを調査するための職員を現地に派遣したという。
 国際赤十字社赤新月社連盟も同日、災害支援にあたる緊急医療チームと資材を被災地へ送った。一方、欧州連合(EU)の欧州委員会は同日、緊急支援に、約300万ユーロ(約4億3000万円)の支出を表明した。
 アメリカ合衆国政府は、地震による被害対策として、200万ドル(約2億2500万円)の緊急支援を行う旨表明し28日中に人員を被災地に派遣。医薬品や浄水装置2基を積んだ航空機も現地に向かった。
 新華社電によると、中国政府はジャワ島中部地震で被災したジョクジャカルタに200万ドル(約2億2500万円)を緊急援助する方針を表明した。
 日本政府は27日夜、外務省、国際協力機構(JICA)職員、医療関係者の計7人で構成する緊急援助チームを28日に現地へ派遣した。日本政府は28日、被災者救済や復興支援のため、1000万ドル(約11億円)の無償資金協力のほか、テントや浄水器、発電機など2000万円相当の緊急支援物資の提供を決め、塩崎恭久外務副大臣が発表した。また医療関係者ら25人で構成する国際緊急援助隊を29日に派遣することも決めた(5月29日5:35現在)

噴煙を上げるムラピ山(2006年5月30日・機中より)

スマトラ沖地震から1年半、噴火、地震で観光産業に大打撃
 インドネシアは2004年12月26日に発生し大惨事をもたらせたスマトラ沖地震から1年半を迎えていた。ジャワ島はスマトラ沖地震ではそれほど被害を受けなかったが、ジャワ島中部のムラピ山(2914メートル)が5月15日から激しく噴煙を上げ、山頂付近から中腹までを分厚い煙が覆っている。火口からは溶岩も流出、大規模な火砕流も発生した。また付近の集落は大量の降灰に見舞われている。火山局によると、本格的噴火の初期段階に入ったとみられ、大規模爆発の危険性はさらに高まり、一部の住民は避難している。今回地震が発生した古都ジョクジャカルタは世界遺産のボロブドゥール仏教遺跡があるなど観光客にも人気が高い観光地であるが、地震と火山噴火の情報で住民の不安は増すばかりで、当分観光客も敬遠すると考えられ、経済的にも厳しい状態が続く。
日本政府の国際貢献方法は問われている
日本政府はインドネシア政府の要請に基づき1次、2次国際緊急援助隊を派遣した。


犠牲者のご冥福をお祈りし、ご家族・被災者に心よりお見舞い申し上げます
山村武彦


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